「あの人達、知り合い?」

「いや、全然。知らない人だよ」

「あの……どんな話を」

「もういいだろ、過ぎたことだし。それよりさ、人がいなさそうな倉庫へ行こう」

「まあ、いいけど……」


これ以上聞いても無駄だと判断して、トレイを握りしめて立ち上がる。

アルマは立ち上がり、一人で食堂の扉へ向かう。

片付けなくていいのだろうか。


(仕方ない。片付けてあげよう)


彼の分のトレイも握りしめ、食堂の調理場へ向かう。

返却のところに置いて空いている隙間を覗けば、看守が囚人に脅されて食器を洗わされていた。

しかも仕事をサボると、ボコボコに殴られてしまう。


よかった。

こんなところにいなくて。


ほっと一息つき、胸を撫で下ろした。



振り返って彼が向かった扉から出て、辺りを見渡す。

あいつの姿はない。

どこまでも自分勝手なんだ!



でもそれだけ自分の意志があるということだ。

そういうところに惹かれるんだよね。

僕は自分の意志が持てないから、とても羨ましく感じる。

いつか自分の考えを持って行動したいな。