「これくらいでいいや。相手も気絶したし。こっちに来なよ、夕飯用意したから」


相手から離れて、僕の肩の後ろに手をかける。

スキンシップが大胆なのも気遣いができるところも凄いなと、感心してしまう。

思わず頬を赤らめてしまった。


「ありがとう」

「いいってことよ。俺とアンタの仲だからね、これくらいするさ」


彼に真顔でそう言われて、コクリと頷く。



アルマに導かれてやってきたのは、食堂の机だった。

テーブルの上にはトレーに乗っている料理があり、彼から先に座った。

アルマの目の前に座ると、何も言わずに自分だけ先にパンを食べ始める。

よく見ると、彼の方が量多いじゃないか。


自分の方はパンが二分の一、スープはちょっとだけ。

飲み物もオレンジジュース一本だし、おかずはない。

それなのにアルマはパン二つとスープ並々、おかずは山盛り。

飲み物も二本ある。


しかし、ここで文句を言っても何も解決しない。

捨てられるよりマシと言い聞かせて、ありがたくいただくことにした。


「いただきます」


手を合わせてからスプーンを握り、スープを掬い上げる。



食事をしている間に、アルマの周りに四人の囚人が集まって来ていた。

あんなことが起きたとは思えないくらい隣が賑わっているのに、言葉が全く分からない。

早口だからではない。

英語ではない、全く違う言語だから。

僕は英語と日本語しか喋れないので、仕方ないことだ。



一人取り残された転生者のように、食事に集中。

食べ終えてから、僕は目の前の彼を見る。

とても楽しげに話しているが、やはり目は笑っていない。

何を考えているのか分からないところが好きなんだよね、正直にいうと。


話しながら食事をする彼が全てを食べ終えた頃には、話し相手が二人になっていた。

所々Japonaisという言葉を聞いたが、確か日本人とか日本語という意味。

バカにしているのかと一瞬思ったけど、雰囲気からそうではないと判断できほっと一息つく。


相手の一人が真剣な顔になって、アルマの耳元で何か話している。

彼はそれを聞いた後、友達と握手していた。

その後二人はいなくなる。