「くっそ……もう、違う場所に行ったのか。それよりこの状態は……」


よく血を見ると、すでに固まっていた。



あれ?血ってこんなにすぐ固まるのだろうか?

もしかして時間が経っているのか?

ということは、これはアルマがやったわけじゃないということになる。

誰が殺したのだろうか?

疑問が深まってくる。


「仕方ない。戻って食堂に行くか……」


資料室βから出ようとしたら、一番奥に一人の看守がブルブルと震えながら独り言をポツポツと呟いていた。


「あ、あの……」


声をかけたのに、返事はない。


そりゃ、目の前でたくさんの仲間が殺されたのだ。

こうなるに決まってる。

そっとしておこう。


その場から去ろうとしたら、声をかけられた。

いきなりすぎてびっくりし、肩が震える。


「囚人様、僕を……僕を殺さないでください!」

「いや、僕は囚人じゃなくて看守です!服装は変装しているだけで……何かあったんですか?」

「看守……?本当に?」

「はい……」

「……よかった。実は二人囚人が来たんだ。最初に来たのは緑の長髪男で、後から来たのは白髪の囚人だった」

「その緑の髪の男って、三つ編みしていましたか?」

「いや、してなかったよ。そいつは手に金槌を持っていて、釘を使って看守全員打ち殺していき…… 僕だけは奥に隠れていたから、なんとか助かったんだ。次に白髪の囚人が僕に声をかけてきたんだ。そいつは僕を殺さず、『看守の履歴書はあるか?』と聞いてきた。変な囚人だなって思ったよ。履歴書のある場所を教えたら、履歴書を一枚抜き取って去っていったんだ。殺さないのかって尋ねたら、『アンタは悪いことをしていない。殺す意味、ある?』って言って、通り過ぎていったな」

「履歴書……?」


そうか。

僕の学歴が書いてある履歴書を掴んで去っていったんだ。

海へ捨てるために。



次に行くのは一階だろうか?

いや、アルマと鉢合わせしていない。

となると次はやっぱり食堂へ向かうべきだ。

そこへ行ったら会えるはず。

こんな生臭くて嫌な場所からはおさらばだ。

この看守を連れ出すと面倒だし、今はそっとしておこう。



踵を返して、扉を開け資料室から出た。

廊下には相変わらず誰もいない。