雲一つない橙色の夕焼け空に、うるさい烏の声が響き渡る頃。

僕は一階のアパートの玄関から出て、茶色い短髪を靡かせ町を走った。



ほとんどの人が帰宅する頃なのか道路にはたくさんの車が行き交い、歩道には人だかりができている。

叔母さんたちが世間話していたり、せかせかと歩いて帰宅する人など人によってさまざま。



その広い歩道を突っ走り、例の待ち合わせであるビルの屋上へ向かう。

そこにヘリコプターがやってくるらしいのだが、やはり現実味がない。



こんな夕方じゃなくて、昼にすればいいのにな。

そうすりゃ誰にも気づかれずに、空を飛べるはず……。



「よし、行くか!」

気合いを込めて、ガッツポーズする。



エレベーターの扉が軽やかな音と共に開き、屋上についた。

空から巨大な音が聞こえたかと思えば、見上げるとヘリコプターのプロペラ音であることがわかる。

しかしこのまま屋上に降りてしまえば、上へ昇るのにプロの操縦士でも苦労する。

それを理解しているのか、ヘリの操縦席から一本の梯子が降りてきた。

僕はゆっくりと近づいて、梯子を上る。





高いのが苦手なので下を見ずに、何も考えることなく上を目指した。

手汗で湿って掴みにくいが、気にせず上にいた二人に持ち上げられる。





ヘリに乗り込むと、その二人が両方とも看守だった。

おそらくベテランなのだろう。

顔つきが険しいし、表情も死んでいる。



「あ、あの……」



ちょうどヘリが橙色の空を飛び始めて、大都会のビルの上を飛んでいる時刻。

ヘッドホンのような形をしたインカムを耳につけたまま、隣に座っているベテラン看守に切羽詰まった声をかける。

彼はめんどくさそうに返答した。


「あ?なんだ?」

「その……白髪のあの人は?」


目の前に座っている白髪の青年がずっと気になっていたので、軽く指を差した。



オレンジ色に六桁の番号が書いてある服を着ているから、囚人なのだろう。

彼はこちらに関心がなく、ずっと窓の外を茶色の瞳で眺めている。

表情は全く変わらない。