彼は確かに脅したり金を受け取るか受け取らないか尋ねてきたけど、悪いやつだとは思わなかった。

確かに個人情報の書かれたカードは取られたけど、もしかしたら捨てるために取り上げただけかもしれない。

しかし、その考えを裏切るかのようにケイは否定してくる。


「私は彼と話したことがあります。とても面白い話をしてくれて、いいやつだと思いましたよ。ただ、それは自分をよく見せるだけの見せかけ。あいつは本物の化け物です。一度見てしまったのですが、彼は仲間を殺していました。しかも、殺した死体の首を締めてニコニコと微笑んでいるいかれっぷり。それを見てもう関わるのはやめました。彼と会ったことがあるなら、友達になってはいけません。自分のいいように利用して、要らなくなったったら捨てる。そういう人です」


長い話を聞いて、僕は息を飲む。

つまり使い物になれるように振る舞うのが、一番友好関係を築けるということになる。


正直にいえば、あいつに利用されてもいいと思っていた。

捨てられるよりも、まだアルマが僕のことを見ている時に寄り添っていればいい。

そうしたら、僕は生きる道を見い出せるから。

誰かに頼って生きていると、自信が湧いてくるから。



僕は踵を返し、何も言わずに階段へ向かう。

階段を勢いよく降りて、資料室へ直行。

場所は階段を降りて、すぐ近くにある。

右を曲がってちょっと進むと、その場所があった。

しかし看守しか持っていないカードを入れないと開かない。

恐らく生き残った看守たちの溜まり場になっていたことだろう。

囚人が入れない場所の一つだから。

アルマが入ったことで、それは崩れ去っている。



あいつは、鋭く尖った切れ味抜群のナイフを持っていた。

それがあれば看守を殺し放題。

普段は大人しそうにしているけど、何人もの人間を殺したと噂される連続殺人犯。

それくらいするに違いない。


カードは持っていないが、応急処置としてカードの番号を入力することもできる。

近くに監視カメラがあるので、囚人の服装でここにいるのは不自然。

開けたら看守だと言っているようなものだ。

ここは大人しく待っているしかないのか。