その声に振り向いた三人は彼を見た途端暴力をやめ、その男にお辞儀をしていた。


「申し訳ありません。ケイ様。俺たちはそんなことしていませんよ」

「隠すのやめたらどうです?私、見ていました。この場で殺しますよ」


鋭い目つきでケイがメガネ越しに睨みつけると、三人とも青ざめた顔をして体全体が震えている。

よっぽど彼のことが怖いようだ。

手も足も出ないのか、攻撃しようとしない。


ケイが拳を握りしめていたら、囚人三人は慌てて階段を上っていく。

意味不明な叫び声をあげて、うめき声をあげて逃げてしまう。


「本当に弱い奴ら……」


ニコリと笑みを浮かべて、ポツリと呟く。

ケイが階段を上ろうとしていたのを左腕を掴んで阻止し、震え怯えている声をかける。

振り返ればメガネ越しに睨んでくる。

鋭く尖った視線に心臓が締め付けられ、ギリギリとストレスが溜まっていく。

気分は良くないが、お礼くらいするのが礼儀だろう。

立ち止まった彼に、深々とお辞儀する。


「助けてくれてありがとうございます」

「別に。助けたわけではありません。邪魔だったので、退かせたまでです」


僕の礼を聞くことなく、階段を上りながら喋り出す。

咄嗟に歩き進めて合わせるように上ると、鬱陶しげな表情で歩みを早くした。


「なんなのですか?私に何か話したいことでもあるんですか?例えば……自分が囚人じゃないってこととか」

「えっ?」


その場に立ち止まり、彼の背中を眺める。

冷や汗が止まらない。


なぜこの人は、僕が囚人でないことを知っているのだろうか。

囚人服も着ているし、正体がバレないように身元も隠しているのに……。


まさかこの場所で殺されるのだろうか。

さっきの様子を見れば、この人は強そうなオーラを放っていたが。



「なるほど。言葉に詰まったということは、本当のことなんですね」

「そ、それは……」

「別に殺しませんよ。今は」

「今は……?」

「はい。私は他の仲間と違い、争いが嫌いなのです。争えば争うほど、自分が醜くなるような気がして。使えそうな人材は残しておくものです」