「よし、ついた」


医務室の回転する椅子の上に下ろされ、彼は奥にある薬や器具などが置いてある棚の方へ向かってしまう。

表情は全く見えないけど、どうせポーカーフェイスを貫いているはずだ。

表情が乏しいからね。


僕は目の前に置いてあるベッドを見るために、椅子から腰を上げる。

あのガタイの良いリークが眠った状態で、ベッドに横たわっていた。

口には酸素を送る呼吸器が装着してある。



この場で殺すのもありだろうか?

そうすれば、この傷もアルマ以外の囚人たちにバレないし襲われることもない。

ただどうしても殺し=犯罪という思考になって、手が出しづらい。

それに……


「そんなことないだろ。お前の身の安全が先だ。殺しなよ」


頭の中から気味の悪い声が聞こえてくる。



殺人は倫理的にしてはいけない。

あのことは忘れなきゃ。

過去の話だ。

過去に囚われていちゃ、前に進むことは出来ない。