心の中で毒を吐きながら、壁から慎重に顔を出す。

すでに僕を殺そうとしたリークと、大柄の男がいなくなっていた。

どうやら医務室に入ったようだ。


アルマは廊下にいる二人と話している。

彼なら脅すこともせずに、彼らを撤退させてくれそうだ。

アルマのことを少しは理解しているので、直感的にそう感じた。


「いやー、まさかフィルの恋人だと思ってなかったぜ。がっかり」

「元恋人よ。こいつとは高校の時に別れた」


ダニエルは肩を落として落胆し、フィルは呆れた表情と口調で話した。



元恋人ということはアルマと付き合っていたってことだよね。

まあ、彼は見た目も行動もイケメンだから普通だな。

なんでこんなに胸がズキズキするんだろう。


そんなことを考えていた次の瞬間、目を見張る言葉をアルマが言う。

背中しか見えないので、表情はわからない。



「それにしても相変わらず女装しているんだね。胸も作ってるみたいだし」

「別にいいでしょ。胸くらい作っても!」

「ま、個人の好きだから別に気にしてない。まさか刑務所で会うなんてね」


胸を作っているってまさか、この人、男?

ここ一番の衝撃を知って、驚愕。


女の子にしか見えないくらい、可愛いじゃないか。

アルマは可愛い子が好きなんだね。


なんかショックすぎて、呆れて何も言えなくなってしまった。

僕は全然可愛くないし、どこにでもいる普通のむさい男だ。

彼に張り合うのだろうか。

少し疑問に感じてしまった。



「実はさ。俺たち、いまつきあって…」

ダニエルが鼻の下を人差し指でさすって自慢しようとしたら、照れ隠しなのかフィルは彼の頭を平手でチョップして誤魔化した。

頬を赤らめている。


「これ以上言うな、バカ!ってごめんなさいね。イチャイチャしてるわけじゃないわ。お友達、体調不良なんでしょ。安静にねって伝えておいて」

彼の表情を見て何かに気がついたのか、汗を散らしながら青ざめた顔で言い訳した。

どんな表情しているのだろうか。


しかも僕のことを「怪我をしている」とストレートに言うのではなく、体調不良と言って説得させたようだ。

もし僕が怪我していることに気づかれたら、看守だってバレるから。

囚人は例外を除いて怪我しないことがほとんど。


アルマくん、優しいな。