「なんで更衣室に倒れていたのかな?看守にやられたのかしら?」

「そうっすよ。それにしかありえないっす」

「でも、ガルドの弟リークを勝手に運んで良かったのかしら。怒らせたら最初に言い出したダニエルのせいね」

「はぁー?なんで俺のせいになるんだよ!姉貴だって運んでいるんだから、同じだろうが!」

「うるさいわね!ごちゃごちゃいうなよ、バカ!」

「そっちだってうるさいやい!」


低い声と高い声が喧嘩を始めて、イライラが立ち込めてくる。

もう一人の大柄で屈強な男が慰めているが、それも二人で一喝していた。


囚人同士の喧嘩だから、尚更緊張感が高まっていく。

殺し合いでもするのではないかと思えば、あの時のことを思い出して気分が悪くなった。



殺人なんかしちゃダメだ。

そんなことをしたら人間としての倫理観が消え失せてしまう。


「別にいいじゃないか。もう倫理観なんて既に崩れているんだからさ」

また頭に響く声か。



そんなわけないだろ。

あれは犯罪者に言われてやっただけだ。

僕は何も悪くない。

どっか行けよ。