初めて生と死について考え始めたのは、小学二年生の頃だった。

それまでは生きている実感がなく、現実にいるという感覚だけ。


その考えがガラッと変わったのは、涼しくなり始め夜が夏より長くなる秋。

母と買い物をして帰る時だ。



たまたま綺麗な白い花を見つけて好奇心で向かったら、いきなり母親が、僕の近くを通りすぎた通り魔に刺されていた。

母の腹から血が噴き出て倒れる。

僕は何もできずに倒れている彼女を無言で眺めることしかできない。

悲しいはずなのに、涙が流れなかった。

なぜか口角が上がってしまった。



これが死というものかと思い知り、母を揺すっても叫び声を上げてもびくともしない。

病院に運ばれたが出血が酷く、助からないと言われた。



あれから数時間後。

ついに母親を亡くし、父親と二人で暮らすことになった。

父親に「母親を殺したのはお前だ」と罵られて殴られ、家に帰るのがより一層苦痛になってしまった。

またあんな苦痛を受けるのは腑に落ちない。




それから色々なことが起きて、現在は一人で暮らしている。




あの白い花は、いったいなんていう名前の花なのだろうか?

よく覚えていない。

でもその花が僕の運命を変えてくれたのは確かだ。