海の祖父母と暮らした家族だが、海の母と祖母…父方の祖母の折り合いが悪かった。一緒に暮らすまでは何ともなかったから同居を決めたのだが、一緒に暮らすと祖母の口煩さが止まらない。
「お風呂は最後に入った人が洗いなさい」
母は朝、洗濯や水やりに残り湯を使ってから掃除する人だった。
「バスタオルは毎日洗わなくていいでしょ?キレイな体を拭くんだから」
母の実家では毎日洗っていたし…お義母さんが洗わなくても自分たちの3枚だけ洗うと
「洗わなくていいものを洗うのはムダ」
という具合だ。
「母さんが洗濯しているのでもない、美映が自分でやっているんだからいいだろ?」
「あら?あなたもここでは3日ほどバスタオルを使っていたのに…おかしな話ね。美映さんに言わされてるの?」
「くだらないな」
そうは言っても実の親子だ。しこりが残るわけではない。だが、母はそうはいかなかった。
「お義母さん、すみません。先週も言いましたけど…海にチョコレートはまだ与えないで下さい」
「もう2歳なんだから大丈夫よ」
「いろんな理由がありますけど…3歳までのあいだは、クッキーなどほかのお菓子に乗っている少量のチョコレートに留めておきたいんです」
結婚前までクッキングスクールで働いていた母には食事について思うところがあるのだが、祖母には伝わらない。
こういったことが数年の間、積み重なり、山積みになって、母は海の小学校入学前の年末に、海を連れて元いた町へと戻った。