今から寒くなる季節が来ることを予告するような海の色と、それを見守るように広がる秋の空。絶対に交わることのない色だと、いつにも増して主張しているような対比だ。

それでもいいと思えた。空とはもう離れることはないと思えた。

「海、来年の誕生日に結婚しような」

遊歩道で立ち止まり二人で海を眺めていると、海を眺めたまま空が言う。

「うん」
「どっちの誕生日にする?」
「空の誕生日にすると空は29歳で私は28歳」
「海の誕生日にすると二人とも29歳…そっちだな、揃える」
「うん」

それから彼はポケットから数珠ブレスレット…パワーストーンブレスレットを出して私の左手首へ通した。

「ブルーアゲート」
「綺麗なブルーだね」
「青瑪瑙」
「間のは水晶?」
「そう。ブルーアゲートの浄化のためにな。指輪はいつか買うけど、今はすぐにでも二人で住む部屋を借りたいと思っている。悪いけど、それで我慢して」
「我慢だなんて…ありがとう、空。私にぴったりの物を選んでくれてすごく嬉しい」
「似合ってる」
「空が私にくれたから」

空は嬉しそうに私の髪を撫でると唇を重ねる。その瞬間、凪の終わりを告げる風が私の髪を揺らした。


[完]