そう大声で言いたかったものの、詩織の両親はベッドに横になっている詩織に「行くぞ」と声をかけ、哀と共に救急科を出て行ってしまう。

「昴さん、ありがとう」

救急科のドアが閉まる直前、詩織は無表情のまま昴に声をかけ、病院を出て行った。



「何なんだ、あの親は!!」

扉が閉まった後、ヨハンが怒りを露わにする。普段温厚な庄司もその目に怒りを滲ませており、救急科は重い空気に包まれていた。そんな中、昴が口を開く。

「詩織の両親は、金融関係の仕事をしていて、幼い頃から仕事ばかりだったと言っていました。二人は東大卒だから、自分の子どもたちにも同じ優秀な高校・大学に入って、いい会社に就職してほしいってそればかり言っているって聞きました」

「そのプレッシャーに耐えられず、リストカットやオーバードーズをしている可能性が高いですね」

桜士がそう言うと、一花が白衣を強く握り締める。彼女が考えていることは、彼女の今にも泣き出してしまいそうな表情を見ていればわかる。