(間に合わなくなる前に)


傷を負ったその日、私は家に帰っても凪くんに会わないようにほとんど部屋にこもっていた。


傷が治るまでこんな生活を続けてしまいそうで、すごく心苦しい。


けど、少しの間だけ。そう言い聞かせて、ベッドに寝転がる。


今日も凪くんは夜中に帰ってくるだろうから、早めに寝てしまえば会わなくて済むし、不自然じゃない。


『東雲』のことで忙しく、疲れているであろう凪くんに迷惑をかけるわけにはいかないから。


私がそもそもバレないように頑張ればいいんだ。


そんなふうに思うけれど、実際の問題はそれだけじゃない。




また……女の子たちにつかまってしまったら…次は何をされるんだろうという恐怖。




素早く振り下ろされる手。怒りと嫉妬で満ちた瞳。


それが何度もフラッシュバックして、無意識に歯を食いしばって身構えてしまう。