「あー、なんか安心したら、久しぶりにお腹すいてきちゃったぁ。やっぱりドーナツも注文すればよかったなぁ」

 あゆあゆが、べしゃっとテーブルの上に突っ伏しながら、俺のドーナツを食い入るように見つめている。

「ひょっとして、この一週間あんまり食べれてなかった?」

「えへへっ。うん、実は……」

「ほら、俺の食べていいよ」

 俺のドーナツのお皿を、あゆあゆの方へと押しやる。

「え、でも……」

「あと、いつもの生クリームのヤツでしょ? 俺、ちょっと行って買ってくるよ」

 俺が席を立ちながらそう言うと、あゆあゆはぱぁっと顔を輝かせた。

「うん、ありがとぉ!」

 俺の買ったチョコドーナツを半分に割ると、「半分こしよーね」と言って、左手のドーナツをお皿に戻し、右手のドーナツにさっそくかぶりつく。

「おいひ~い。しあわへ~」

 俺は、あゆあゆのその笑顔がもう一度見られただけで幸せだよ。

 そんなあゆあゆの笑顔を守るためにも、あともうひと踏ん張りしなくっちゃ。

 俺は密かにこぶしを握りしめると、覚悟を決めた。