次の月曜日の朝。
教室で瑞穂と話していると、アキちゃんがいつもより少し遅めに登校してきた。
「衣奈、松川さん、おはよう」
わたし達のそばを通り過ぎるとき、アキちゃんが笑顔で声をかけてくる。
「おはよう」
「お、おはよう」
笑顔でアキちゃんに挨拶を返す瑞穂のとなりで、わたしはちょっとどもってしまう。
土曜日に見てしまった、アキちゃんと里桜先輩のキス。それが、ふと脳裏によみがえって気まずかった。
今朝も、アキちゃんは駅前で待ち合わせして、里桜先輩と一緒に登校してきたのかな。
今までは、毎朝仲良く登校するふたりのことをうらやましく思っていたけど。リアルなキスシーンを見たせいで、アキちゃんの顔がまっすぐ見れない。
もちろんアキちゃんは、里桜先輩とのキスをわたしに見られていたことなんて知らない。
だから、わたしが勝手にひとりで気まずくなってるだけなんだけど……。
「衣奈、どうかした?」
不自然に目線をそらすわたしのことを不審に思ったのか、アキちゃんが少しだけ顔を近付けてきた。