「あいつが衣奈ちゃんに振り向くように、おれが協力しようか?」
「なに言ってるの。アキちゃんは、里桜先輩のことが好きなんだよ。それに由井くんだって、わたしがほかの人と仲良くするのはいやだって言ってたじゃない」
ゆるりと首を横に振ると、由井くんが「いやだよ」とつぶやく。
「衣奈ちゃんがほかのやつと仲良くするのはいやだ。でも、おれ、衣奈ちゃんのこと好きだから。衣奈ちゃんが望めば、おれは衣奈ちゃんのためならなんでもするよ」
口元にだけ笑みを浮かべる由井くんの目は、本気では笑っていない。
わたしを見つめる空洞みたいな目が、なんだか少し怖かった。