「急に家とは反対方向に暴走し始めたから、びっくりしたよ。気をつけなきゃ」
由井くんに、はぁーっとため息を吐かれて、ようやく少し、頭が働き始める。
「電柱にぶつかりそうになったとき、空気で守られたみたいな気がしたんだけど……。由井くんが助けてくれたの?」
「たぶん……」
「ありがとう。ユーレイって、あんな力も使えるんだね。びっくりした」
お礼を言うと、由井くんが自分の手のひらに視線を落として少し照れ臭そうに笑う。
「うん、おれもびっくり。でも、衣奈ちゃんが危ない、守らなきゃって思ったら、不思議と力が出た」
「そう、なんだ……」
「おれ、たぶん、衣奈ちゃんのためならなんでもできるんだと思う」
わたしに視線を戻した由井くんが、唇に弧を描くようにして綺麗に微笑む。その笑みの妖しいまでの美しさが、わたしをドキリとさせた。



