「じゃあ、俺行くな」
乱された髪を手櫛で整えていると、アキちゃんがそう言って笑う。
わたしに手を振るアキちゃんの身体は、既に駅の改札の向かいにあるコンビニのほうに向いていて。その入り口の前で、里桜先輩が待っている。
里桜先輩は、わたし達のひとつ上の高校二年生。
アキちゃんが入っているサッカー部のマネージャーで、アキちゃんのカノジョ。
長く伸ばした髪はサラサラで、少し下がった目元がいつも笑っているように見える、癒し系の美人だ。
高校生になってサッカー部に入ったときから、アキちゃんはずっと里桜先輩に片想いをしていて。夏休み前に思いきってアキちゃんのほうから告白したら、里桜先輩からオッケーの返事をもらえたらしい。
憧れの里桜先輩と付き合えることになったアキちゃんは、かなり浮かれていて。
夏休み中は、「デートはどこに誘えばいいと思う?」とか「昼メシ食べるならどんな店が喜ばれるかな?」とか。
相談のラインが毎日のように送られてきた。
そんなアキちゃんからのラインに面倒くさいが半分、複雑な気持ちが半分でせっせと返信しているうちに、気付いてしまった。
アキちゃんと里桜先輩との関係がうまくいけばいくほど、胸が痛くなって、ドス黒い感情がちょっとずつ心に溜まっていくことに。



