お菓子売り場には、買い物カゴやカートを押したお客さんが何人かいた。土曜日の午後だから、子連れのおとなも多い。
小さな子がいなくなったとなれば、この子のお父さん、お母さんも焦って探しているはず。
だけど、お菓子売り場には迷子の子ども探していそうなおとなはいなかった。
「お父さんかお母さん、いる?」
男の子のほうを向くと、少し姿勢を低くして話しかける。
男の子はお菓子売り場全体を見回してから、これまで以上に泣きそうな顔でプルプルと頭を振った。
「そっか。じゃあ、サービスカウンターのほうに言ってみようか」
男の子の手をひいて、お菓子売り場を離れようとしたとき。
「ハヤト……!」
抱っこ紐で赤ちゃんを抱いた女の人が、早足で近付いてきた。
「ママ!」
泣き顔だった男の子の表情がパッと明るくなり、わたしと繋いでいた手が離れる。
男の子は女の人のところに真っ直ぐに走っていくと、彼女にぎゅーっとしがみついた。
「よかったー。ごめんね、不安だったね」
男の子の頭をなでて、ぎゅーっと抱きしめ返す女の人を見て、わたしもほっとする。
よかった。お母さん、見つかって。
これで、わたしの役目はおわりだな。
そっと立ち去ろうとすると、「あの……」と男の子のお母さんに呼び止められた。



