「どうしたの? お母さんか、お父さんは?」
買い物カゴを床に置いて、腰をかがめて話しかけると、男の子は泣き顔のまま小さく首を横に振った。
「どこに行ったかわからなくなっちゃったのかな?」
そんなふうに聞き直すと、男の子がコクンと頷く。
「どこで離れちゃったか、わかる?」
「おかしのところ……」
男の子が、涙交じりの声で教えてくれる。
「じゃあ、お姉ちゃんといっしょにお菓子売り場のところに戻ってみようか?」
わたしの提案に、男の子が唇をへの字にして、コクンとうなずく。
手を差し出すと、男の子がわたしの手にそろっと触れてきた。
怖がらせないように、男の子の小さな手を軽く握る。そのときに、ふと由井くんのことが気になった。
わたしが誰かと話したりすると、その相手に敵意のまなざしを向ける由井くんだけど……。
こんな小さな子のことはさすがに怖い目で見ないよね……。
心配になっていちおう確認したら、由井くんはわたしと手をつなぐ男の子のことを無表情で見ていた。
由井くんがなにを思っているかはわからないけど、とりあえずこの男の子になにかするってことはなさそう。
だから安心して、男の子といっしょにお菓子売り場のほうへ向かった。



