「え、誰? 知り合い?」
「うん。同中のやつ」
周囲に聞かれてうなずいたのは、同級生の大野くんだった。青南学院に進学した、アキちゃんの友達だ。
「ひさしぶりだよな。土曜日にこんなとこでなにしてんの?」
男子集団の中から抜けて歩み寄ってきた大野くんが話しかけてくる。
「あ、えーっと。ちょっと近くまで来る用事があったから」
「そうなんだ? 今日は部活の生徒くらいしか来てないけど。うちの学校の誰かに用事?」
大野くんが、不思議そうに首をかしげる。彼が不思議がるのもムリはない。
だって青南学院の最寄り駅周辺には特に大きな商業施設があるわけでも、高校生が遊べる場所があるわけでもない。
この近くに住んでいるか、学校があるか、仕事場があるか。そういう人くらいしか来なさそうな場所なのだ。
そんなところにわざわざ来てるってことは、青南学院の誰かに用があると思われても仕方がない。
「うーん、用事っていうか……」
「うん?」
話しかけてくれた大野くんにどう言えば変に思われないか考えていると、なんとなく視線を感じた。
ふと見ると、由井くんが大野くんのことを睨むように見つめている。
隣から漂ってくる、不穏な空気。その冷たさは、わたしがアキちゃんと付き合っていると勘違いしていたときの由井くんの気配と似ている。



