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青南学院は、電車の駅から五分も歩かない場所にあった。
学校までの道中には、マンションのほかにコンビニやファミレスがあったけど、学校帰りに遊んで帰るような場所はほとんどない。よくも悪くも、あまり面白味のないふつうの街だ。
「学校が駅から近いのっていいよね。それに、中も広そう……!」
青南学院は中高一貫の有名私立高校ということもあって、わたしが通っている公立高校よりも随分と大きい。それに、外観もきれいだ。
青南学院の前まで来てもやっぱりなにも思い出さないらしい、由井くん。そんな彼と一緒にしばらく大きな校舎を眺めていると、正門の向こうから青南学院の生徒が何人か歩いてきた。
男子生徒ばかりで、みんな肩に大きなスポーツバッグかけている。午前中に活動していた運動部の生徒っぽい。
数人のグループに別れてしゃべりながら、ぞろぞろと歩いてくる彼らに場所を譲るため、正門の端によける。
この集団が通りすぎたら、由井くんに帰ろうって声をかけよう。せっかく来たけど、収穫はなさそうだし。
ぼんやり考えていると、青南学院の集団の中にいたひとりの男子が「あれ?」とわたしを指差した。
「三住だよな?」
その男子のひとことで、通りすぎて行こうとしていた男子集団の視線が、いっせいにわたしに集まる。



