ん? 飛ばされる……?
たしかに、由井くんの体は空気よりも軽いもんね。
てことはもしかして、このままわたしがハイスピードで自転車を漕げば、由井くんを引き離せるんじゃないかな。
ものは試しだ。
ペダルを踏み込む足に力を入れて、さらにスピードをあげる。
さあ、どうだ……!
駅前の広場が見えてくる頃、スピードを緩めて振り向く。だけど、そこにはちゃんと由井くんがいた。
結構なスピードで自転車を漕いだのに、うしろに座っていた彼は、髪の毛ひとつ乱れていない。
むしろ、ちょっと汗ばんで、風に髪の毛がかき乱されてしまったのはわたしのほうだった。
また、作戦失敗……。
「衣奈ちゃん、ハンドル握ると性格変わるタイプ?」
少し残念に思いながら駅前の駐輪場に向かってゆっくりと自転車を走らせていると、由井くんが心配そうな声で聞いてきた。
「さっきの緑道は車が通らないけど、歩行者はいるし、もうちょっとスピードを気をつけたほうがいいよ」
そんなふうに諭してくる由井くんは、たった今わたしが、自転車で彼を振り切ろうとしていたことに気付いていない。
わたしは出会ってからずっと、由井くんが離れてくれる方法を考えてて。そうしたいと思っているということを言葉にもしているのに。
由井くんはどうしてこうも、わたしになついてくっついてくるのだろう。それでもわたしが好きなんて……。
ほんとうに、ユーレイになる前の由井くんとわたしのあいだになにがあったんだろう。
彼のことがわからなすぎて、困る。



