「衣奈ちゃん、ちょっと待って」
追いかけてくる由井くんの気配を感じながら玄関に向かうと、お母さんがリビングから顔を出した。
「衣奈、出かけるの?」
「うん。帰りに買い物してくるから、あとでラインにリストを送っといて」
「ありがとう。お願いね」
「はーい、いってきます」
お母さんに軽く手を振ると、わたしは靴箱の上の小物入れから自転車のカギを取って外に出た。
玄関の横の通路からガレージに抜けて、自転車を道路に出すと由井くんがわたしのことを不思議そうに見てきた。
「おれが通ってた学校の近くまで行くんだよね? そこまで自転車で行くの?」
「それはさすがにムリだよ。遠いもん。自転車で行くのは地元の駅まで。帰りに買い物寄るとき、自転車があると楽だから」
「ふーん」
「じゃあ、行こうか」
「あ、ちょっと待って」
わたしが自転車に乗ってペダルを漕ぎ出そうとすると、由井くんがストップをかけてくる。
なんだろう? って思ったら……。
「おれも乗りたい」
にこっと笑った由井くんが、わたしの自転車の荷台にふわりと腰かけた。



