「衣奈ちゃんとデート、嬉しい。行こう、今すぐ」
「デートって言ったって、青南学院の近くにちょっと行ってみるだけだよ。由井くんがなにか思い出せるかもしれないから……」
「衣奈ちゃんとふたりで出かけられるなら、どこだっていいよ」
にこにこ笑顔の由井くんが、わたしの左腕に両腕をからめてくる。そこに体温や質感はなくて、実際には由井くんがわたしと腕をからめてるふうにくっついてきているだけなのだけど……。
デートって言葉に喜んでいる由井くんは、無邪気でちょっとかわいく見える。
由井くんがユーレイじゃなくて生身の人間だったときに知り合えたら、もうちょっとふつうの友達になれたのかな……。
ぼんやり考えていると、「衣奈ちゃん?」と由井くんがわたしの顔を横から覗き込んできた。
心配そうに目の奥をジッと見つめられて、ドキッとした。由井くんは、整った綺麗な顔立ちをしているのだ。
四六時中いっしょにいるとはいえ、間近で見つめられると変に緊張してしまう。
「衣奈ちゃん、大丈夫?」
「だ、大丈夫、大丈夫」
わたしは由井くんからパッと顔をそらすと、部屋に戻ってスマホと近所に出かけるときにいつも持ち歩く黒のボディバッグを手に取った。
それから、「行こう」と由井くんに声をかけて、先に階段を駆け降りる。



