今日も、由井くんに憑けられています……!


 アキちゃんとは同じクラスだから、どうせ教室でまた顔を合わすし。ただの幼なじみでしかないわたしが、アキちゃんと友達の会話に入っていくのもおこがましい。

 階段に向かって廊下を歩いていると、学校に着くまでわたしとアキちゃんの話を黙って聞いていた由井くんが、すーっと隣にやってきた。


「そういえば衣奈ちゃん、前まではよく、アイツと一緒に電車に乗ってたよね」

 由井くんの言葉に、ドキッとする。


「なんで、由井くんがそんなこと知ってるの?」

「わからない……。けど、なんかそんな気がした」

 由井くんが眉をハの字に下げて、自信なさそうに小さく首を横に振る。

 わからないと言う割には、『アイツと一緒に電車に乗ってた』って、結構ハッキリと断言していた気がするけど……。べつになにかを思い出したってわけでもないらしい。

 由井くんの中に潜在的に残っている記憶が、ふとした瞬間に言葉になってこぼれたのだろうか。

 由井くんが言ったように、高校生になってからしばらくのあいだ、わたしとアキちゃんは朝の同じ時間帯の電車に乗って通学していた。

 家が近所のアキちゃんと朝一緒に登校するのは、小学校の頃から続いている習慣みたいなものだったのだ。

 だけど、アキちゃんが里桜先輩と付き合い出してから、わたしは電車の時間を一本ずらした。

 里桜先輩と付き合えたアキちゃんの邪魔はしたくなかったし、ただの幼なじみのわたしが、毎朝彼女持ちのアキちゃんと一緒に登校するのはよくない気がしたから。