「え、衣奈姉、大丈夫?」
「クレイ、昨日もお姉ちゃんのこと引っ掻いてたよね」
由井くんの姿が見えない咲奈と拓には、わたしがクレイに威嚇されているようにしか見えないらしい。
咲奈が怒っているクレイをなだめて抱き上げてわたしから引き離し、拓が救急箱からバンソウコウの箱を出してきてくれる。
咲奈がクレイを抱いて離れると、由井くんがわたしのところに飛んできて、背中の後ろにピッタリくっついてきた。そのおかげで、クレイがますますわたしのことを警戒して歯を剥いてくる。
「衣奈姉、一枚で足りる?」
「ありがとう……」
「クレイ、昨日からどうしちゃったんだろうね。お姉ちゃんには特になついてたのに」
拓が渡してくれたバンソウコウを手の甲に貼りながら、わたしはとてもショックを受けていた。
二日前まで、わたしとクレイは相思相愛だったはずなのに……。まるで、失恋した気分。
夏休み前にアキちゃんが里桜先輩と付き合い出したと知ったときもショックだったけど、クレイに嫌われるのはそれ以上にショックかもしれない……。
咲奈の腕の中でわたしに歯を剥いてくるクレイの姿に胸を痛めるわたしの背後では、由井くんが怯えて震えている。



