次の日の朝。
いつものように地元の駅から3両目の車両に乗り込んで、高校の最寄り駅で降りたわたしは、目の前に現れた人の姿に心臓が止まりそうなほど驚いた。
「おはよう、衣奈ちゃん」
駅のホームの3両目の乗り場の前。そこに立っているのは、昨日の放課後に見かけた青南学院の制服を着たイケメン男子高校生。
笑顔でわたしに手を振ってくる彼の身体を、わたしのあとから電車を降りてくる人たちがあたりまえみたいにどんどんすり抜けていく。
電車を降りたすぐの場所で思わず足を止めてしまったわたしは、後ろから降りてくる人たちに押されたりぶつかられたり。邪魔者扱いされて舌打ちされたりしているのに、同じように3両目の乗り場の前に立っているイケメン男子高生は、誰からも邪魔者扱いされていない。
その理由はおそらく……、わたし以外の誰にも彼の姿が視えていないから。
昨日の放課後の時点でうすうす気が付いていたけれど、この人はたぶんユーレイ的ななにかだ。
そうじゃないと、彼の姿や声を誰も認知している様子がないことや、通行人が彼の身体を突き抜けて進んで行くこと、彼が昨日と全く同じ姿で同じ場所に立ち続けていることに説明がつかない。
でも、どうしてわたしだけに彼の姿が視えているの……?
わたしは人になつかれやすいタイプではあるけれど、特別霊感が強いタイプじゃない。だから、この不思議な状況が少し怖かった。