「おはよう」
いつもわたしが揺り起こすまで寝ている拓が、今朝はもう着替えまで済ませている。
「おはよう、拓。今日はひとりで起きれたんだ?」
声をかけると、拓がわたしを見て顔をしかめた。
「そりゃ、起きるよ。だって、衣奈姉、隣の部屋ですげー叫ぶんだもん。朝からあんなうるさくされたら、嫌でも目ぇ覚める」
拓が生意気にそう言って、キッチンに入っていく。
「朝ごはん、どうする? トーストと卵焼く?」
冷蔵庫から牛乳を出して飲んでいる拓に聞くと、「じゃあ、目玉焼き。半熟で」と返ってくる。
「咲奈は?」
「あたしは、もうすぐ出かけるからスープだけでいい」
「はい、はーい」
わたしはカップのスープを半分ほど飲むと、拓と自分の分の朝食を作るために立ち上がった。
キッチンに向かおうとするわたしの元に、ソファーのそばで丸まっていたクレイがゆっくりと歩み寄ってくる。
昨日、由井くんがそばにいるときは、クレイにめちゃくちゃ警戒されていたけど、今は大丈夫みたい。
由井くんが視界に入る場所にいなければ、クレイはいつもどおりにわたしになついてくれるみたいだ。よかった。



