彼が積極的に自分のことを思い出すつもりがないのなら、わたしがなんとか思い出せるよう導いて、離れていってもらわなくては。わたしと……、あとはクレイのためにも。
とりあえず彼の見た目からわかることと言えば、黙って立っていれば端正な顔立ちのイケメンってことと、それから……。
「あなたが着てるのって、青南学院の制服だよね」
「制服?」
わたしが指差すと、イケメンユーレイは初めて自分が着ているものに気付いたみたいに、黒のブレザーの胸元を引っ張った。
「青南学院は、毎年何人も東大生を輩出してる私立の進学校だよ。あなたが立ってた駅から別の路線に乗り継いで五駅先にあるんだけど……。なにか覚えてない?」
彼はしばらく、自分が付けている紺のネクタイをつかんで持ち上げたり、制服のズボンを触ったりしていたけれど……。それらを見ても特に何も思い出すことはなかったらしい。
眉をハの字に下げでわたしを見ると、申し訳なさそうに首を横に振った。
「着ているものを見ても、特に思い出すことはないかも……。制服を着てるってことは、おれはその青南学院ってところの生徒なのかな」
「たぶんね。あと、たしかな情報じゃないけど、青南学院って五〜六年前に制服が変わってるはず。あなたが着てるのは今の制服だから、最近の高校生だったってことは間違いないんじゃないかな」
「なるほど。衣奈ちゃん、頭いいね。名探偵みたい」
わたしの話を聞いた彼が、感心したように目を見開いた。



