クレイは、二年前にわたしが近所の公園で拾ってきた猫だ。たぶん雑種だけど、アッシュブルーの毛と緑がかった瞳の色がなんとなくロシアンブルーっぽい。
「ただいま、クレイ」
クレイは家族の中でもわたしに一番よくなついていて、名前を呼ぶと足に体を擦り寄せてくる。それなのに……。
なぜか今日は、わたしを見るなり背中の毛を逆立てて、「シャーッ」と、威嚇してきた。
「どうしたの、クレイ」
様子のおかしいクレイに近付こうとすると、クレイが数歩後退りして、わたしを見上げて歯を剥いてくる。
「クレイ、どうしたの? お姉ちゃんに威嚇するのなんて初めてじゃない?」
コップをキッチンのシンクに置きにきた咲奈が、毛を逆立てて怒っているクレイを見て目を見開く。
「そうだよね。どうしたんだろう……」
買い物袋を台所の床に置くと、クレイのそばに歩み寄る。そのままちょっと強引に抱き上げようとすると、クレイがわたしの手の甲にガリッと爪をたててきた。



