彼曰く、

「おれ、どれだけ頑張って動こうとしても駅のホームのあの乗り場から全然動けなかったんだ。でも、衣奈ちゃんがおれから逃げようとしたとき『離れたくない!』って強く思って……。そうしたら、衣奈ちゃんについて電車に乗れたんだ。でも、衣奈ちゃんに、憑いてきたら困るって言われたから離れようとしたんだけど……。あのホームの乗り場から離れられなかったみたいに、今度は衣奈ちゃんの近くから離れられなくなっちゃったみたい」

 とのことらしい。

 わたしから離れられなくなっちゃった、って。本格的にヤバいじゃん。

 そう思ったわたしは、彼を撒くためにダッシュで逃げた。

 だけど、どれだけ逃げても、彼はわたしの後ろをぴったり憑いてくる。

 最初は彼が自分の意志でつけてきているのかと思ったけれど、そうではなくて。彼自身もよくわからない引力みたいなものに引き寄せられていて、わたしから離れられないらしい。

 結局、家に着くまでにイケメンユーレイを撒くことはできず……。

 不本意にも、彼を家まで連れてくることになってしまった。