「ここが衣奈ちゃんち……!」

 駅から徒歩十五分の自宅に着くと、イケメンユーレイがボソリとつぶやいた。

 ちらりと横目で見ると、彼がウチを見上げながら、両手を合わせて目を輝かせている。

 どうしてこんなことになっちゃったんだろう……。

 わたしは、電車を降りてから家に着くまでの彼とのやりとりを思い出して、深いため息をこぼした。

 電車の中で『憑いてっちゃダメ?』と訊かれたとき、わたしは「困ります」と、彼のことをきっぱりと拒否したはずだ。


 それなのに――。

 わたしが地元の駅で電車を降りると、なぜか彼もついてきた。

 駅前のスーパーで夕飯の材料と明日の朝ごはんの材料を買っているときも、買い物を済ませてスーパーを出たあとも、彼はわたしを追いかけてきて……。


「どこまでついてくるの? わたし、困りますって言ったよね?」

 たまりかねて訊ねると、イケメンユーレイが申し訳なさそうに目を伏せた。

「わかってるんだけど……。どうやって衣奈ちゃんから離れたらいいかわからなくて……」

「え……?」