今日も、由井くんに憑けられています……!


「お願い、逃げないで」

「嫌です、ムリです……!」

 首を横に振って強く拒絶すると、イケメンユーレイがショックを受けたように、ズーンと肩を落としてうなだれた。


「おれ、衣奈ちゃんに嫌われてるんだ……」

 ブツブツとつぶやくイケメンユーレイから、今度はただならぬ気配の負のオーラが漂い始める。気のせいかもしれないけど、周囲の温度が少し下がったような気がする。

 ぷるっと震えると、イケメンユーレイが右手の親指の爪をガリッと噛みながら、虚ろな瞳でわたしを見てきた。

「どうしたらいいんだろう……。おれにはもう、衣奈ちゃんしかいないのに……」

 暗い表情を浮かべてぼそぼそとつぶやく彼は、情緒不安定になっている様子だ。

 白く青ざめた綺麗な顔には悲壮感か漂っていて、今にも倒れてしまいそう……。(ユーレイだから、倒れるも何もないのか……)

 正体不明のユーレイなんかに、絶対情けをかけちゃだめ。

 それはちゃんとわかっているのに、わたしのおせっかいな部分が、やっぱりちょっとかわいそう……? なんて思ってしまう。


「あ、の……。そもそも、どうしてわたしに話しかけてきたんですか……?」

 警戒しながら、恐る恐る声をかけると、イケメンユーレイがゆっくりと視線をあげた。

 奥二重の切長の目が、わたしのことをじっと見つめる。憂いを帯びたまなざしに、思わずドキリと胸が鳴る。その瞬間、彼が言った。


「だって、おれ、衣奈ちゃんのことが好きってことしか覚えてないから」

 彼が発した言葉が、頭の中でうまく理解できないままに流れていく。