だけど、だけど……。惑わされちゃいけない。
だってわたし、もう二回も、彼の眼力による金縛りにあっている。
イケメンユーレイを精一杯、ギリリと睨め付けると、彼がますます困ったように眉尻を下げた。
「おれ、もしかして衣奈ちゃんに嫌われてる?」
彼が少し首を傾げながら、不安そうな声で訊ねてくる。
どうして彼がわたしの名前を知ってて、しつこく憑けてくるのかはわからないけど……。
こっちは彼のことを全く存じ上げないし。その時点で、嫌いとか、好きとかの次元じゃない。
わたしに縋りついてくるような上目遣いを見れば、ちょっとかわいそうかな……、なんて思うけど。
でも、ここで情けをかけてしまっては終わる気がする。
「悪いけど、他を当たってください」
小声で。だけど、頭を下げて丁重にお断りをしてから離れようとすると、イケメンユーレイもわたしについてくる。
「こ、来ないでください……!」
吊り革を持って立っている乗客たちの合間を縫って、早く隣の車両へ……と思いながら逃げる。
途中でいろんな人にスクールバッグがぶつかって嫌な顔をされたけど、そんなの構ってられない。
人波を掻き分けて、やっと隣の車両へ通じるドアを引き上げようとしたとき。
「お願い、待って」
イケメンユーレイが、スーッとやってきてドアの前で通せんぼした。



