ドキッとして振り向くと、少し離れたところから、イケメンユーレイが大きく目を見開いて、わたしを凝視している。
人波にうまく紛れたはずだったのに、他の乗客たちは彼にとって何の障壁でもないらしい。妖しげな光を宿した彼の双眸は、真っ直ぐに、的確にわたしだけを捉えていた。
周囲のざわつきや電車の走行音が少しずつ遠くなり、わたしだけが時間が止まったようにそこから動けなくなる。
また、金縛り……?
駅のホームでも感じたような、見えない縄でその場に縛られているみたいな感覚。
もしかしてわたし、とんでもない悪霊に取り憑かれたんじゃ……。
全身に冷や汗をかきながら恐怖に震えていると、電車のドアの近くにいたイケメンユーレイが、周囲の人をすり抜けて、スーッとわたしの前までやってきた。
「衣奈ちゃん」
名前を呼ばれて、ゾクリとする。
助けを求めたいけど、声が出ない。ハクハクと口を動かしていると、イケメンユーレイが困ったように眉尻を下げた。
「お願い、置いていかないで」
そ、そんなこと言われても……。ムリに決まっている。
だって……。怖いし、怖いし、怖い……!
断固拒否の姿勢でブンブンと首を左右に振ると、イケメンユーレイは、さっきわたしを動けなくさせたときとは一変。捨てられた子犬みたいなしおらしい目でわたしを見つめてきた。
そういう表情をすると、彼は身体が透けてるものの、普通の男子高校生にしか見えない。
眉をハの字に下げた顔はちょっと弱そうで頼りないけど、元の顔がいいから、ちょうどいいくらいのギャップになってる。
面食いの瑞穂だったら確実に高評価をつけるであろう、端正な顔立ちの綺麗目なイケメンだし、わたしも駅のホームでは彼の綺麗さに一瞬目を奪われた。



