今日も、由井くんに憑けられています……!


「あ、あ、あなた……!」

 思わず大声を出したら、周囲の乗客達からいっせいに不審な目で見られた。

 ついさっき駆け込み乗車という迷惑行為をしたこともあって、周囲の人たちのまなざしがことさら冷たく感じる。

 わたしは口元に手をあてると、軽く咳払いして目を伏せた。うつむけば自然と前に流れてくる横髪で周囲から顔を隠しつつ、やや上目遣いにイケメンユーレイのことをジッと見る。

「あなた、誰なの」

 小声でひそひそささやくと、イケメンユーレイが眉をハの字に下げて首をかしげた。

「さあ……? おれ、誰だと思う?」

 人にこんなにも怖い思いをさせておいて、「さあ……?」はない。

「ふざけないで」

 ぎゅっと眉間にシワを寄せると、イケメンユーレイが「でも、ほんとうにわからないんだ……」とちょっと泣きそうな声を出す。

「衣奈ちゃんがキーパーソンだと思ったけど、違ったのかな……」

 イケメンユーレイが、ぼそぼそとつぶやいている。

 これは、生前の記憶がないまま魂が彷徨ってるって状態なのだろうか。そういう設定、小説とかマンガで見たことがある。

 かわいそうだけど、フツーの女子高生のわたしが力になれることはないだろう。

 誰か、ほかに()える人が彼を見つけてくれますように……。

 彼がひとりでぶつぶつ言っているあいだに、そーっと少しずつ距離をとる。

 他の乗客に紛れながら移動して、別の車両まで逃げちゃおう。

 そろそろと横歩きで動いて、赤ちゃんを抱っこしたお母さんと他校の女子高生のグループのあいだに身を隠そうとしていたとき。

「どこ行くの、衣奈ちゃん」

 鼓膜に突き刺さるような鋭く低い声が、わたしを呼び止めた。