「え、衣奈ちゃん……?」
わたしの額が、由井くんの胸にトンッとぶつかる。
びっくりして揺れる由井くんの声に、こっそり微笑みむと、わたしは由井くんの背中にぎゅっと腕を回した。
わたしを受け止めるたしかな感覚。それを感じられることが嬉しくて、人目も構わず、由井くんにぎゅーっと抱きつく。
「もう離れないで。ずっといて」
「うん……」
小さく頷いた由井くんが、遠慮がちにわたしを抱きしめてくる。
ドクン、ドクンと。由井くんの胸に押しつけた耳に、高鳴る鼓動が響く。
不器用に抱きしめてくれる由井くんの腕の中は、とてもあたたかくて。わたしは、また少しだけ、泣きそうだった。
fin.



