「目覚めたあとは、別にどこも悪いところもなかったんだけど……。親っていうか、特に兄ちゃんががめちゃくちゃ心配してて……。念のためだって、いろいろ検査受けさせされたり、しばらく安静にしろって自宅療養させられたりで……。やっと一週間前から学校に行かせてもらえるようになったんだ。だけど、当分は、兄ちゃんが車で送り迎えするって聞かなくて……。全然ひとりで出歩けないんだ。放課後も校門前で兄ちゃんに待ち伏せされてるから、今日は昼休みのあとにこっそり早退して、ずっとここで衣奈ちゃんのこと待ってたんだよ」
長かったこの二ヶ月間についての説明をしたあと、彼がにこっと笑いかけてくる。
わたしが無言のまま、また、なんの反応もできずにいると、彼が不安そうに眉尻をさげた。
「ご、めん。いきなり。あれから、ずいぶん日にちが過ぎてるもんね。衣奈ちゃん、もう、おれのこととか覚えてない……?」
彼の瞳が、哀しそうに揺れる。
「……、そ、んなわけないでしょ」
ボソリと低い声でつぶやくと、彼が今度は不安そうに、わたしの顔を上目遣いに覗き込んでくる。



