なにこれ。これってもしかして、金縛り……?
体が全然動かせない。
初めての感覚に怯えていると、はぁーっという彼の息遣いとともに、冷たい風が耳を掠めた。
「ああ、ホンモノの衣奈ちゃん……」
ぐふっというくぐもった笑い声とともに聞こえてきたのは、イケメンユーレイの少し荒い息遣い。
正面から抱きしめられているせいで彼の顔はよく見えないけど……。
髪の毛の匂いを嗅がれているのか、すーはーという息の音に合わせて、首筋に冷たい風がかかる。
な、何これ。怖い……。
わたし、このままだと取り憑かれちゃう……!?
途端に心臓がバクバクと早鐘を打ちはじめ、手のひらが変な汗でじとっと湿る。
ちょっとかわいそうだな、なんて。中途半端な同情で情けなんてかけちゃダメだった。
やばい。やばい。やばい!
逃げないと……!
わたしは肩に重しのようにのしかかってくるイケメンユーレイの腕を無我夢中で振り払うと、ドアが閉まりかけようとしている電車に飛び込んだ。



