高校の最寄り駅で青南学院の制服を着た男子生徒見かけるたび、もしかしたら……、と振り返るけど、それが由井くんであったことは一度もない。
ユーレイ状態の由井くんはなにも覚えていなかったし、もちろんスマホなんて持っていなかったから、連絡先もわからない。
由井くんは、今どこにいるんだろう。
ユーレイ状態だった由井くんの身体は、元に戻れただろうか。
無事に目を覚ましているだろうか。
目を覚ましているといたら、どうして二ヶ月も音沙汰がないんだろう。
元の身体に戻れたら、水族館デートしようって約束したのに……。
約束も、わたしのことも、もう忘れちゃったのかな……。
吐いたため息が、真っ白な細い線になって風に流れる。
マフラーに顔を埋めながら目線だけあげる。駅は、もうすぐそこだ。
カバンからIC定期を取り出すと、改札を抜けて駅のホームに入る。