「うー、寒い……」

 下駄箱で靴に履き替えて外に出ると、肌に痛いくらいの冷たい風が正面から吹きつけてきた。

 マフラーでは完全に覆いきれない顔と、スカートからのぞく膝が寒い。

 校庭では、運動部員たちが活動を終えて後片付けを始めている。そのなかにはアキちゃんの姿もある。

 里桜先輩といっしょにボールを片付けているアキちゃんは、楽しそうに笑っている。その様子を見ても、最近のわたしの心はチクリとも痛まない。

 むしろ、仲良さそうなふたりの姿を微笑ましく思いながら、わたしはひとり、駅へと急いだ。

 今日は委員会があって、いつもより帰りが遅くなってしまった。

 買い物に寄っていたらごはんの準備が遅くなりそう。

 念のため、妹の咲奈にラインを入れておく。

 下を向いてスマホを触っていると、ふと、後ろでなにか気配がする。


「由井くん……?」

 ビクッとして振り向いたけど、そこに彼がいるはずもない。ただ、枯れ葉が風に流されてきただけだった。