どうか、由井くんが元に戻れますように。
彼が、無事に目を覚ましますように……。
願いを込めて、消えかけている由井くんの唇に架空のキスをする。
しばらくしてからゆっくりと目を開けると、由井くんの身体は、空中で溶けて消えかかっていた。
「ありがとう。衣奈ちゃん、大好き」
わたしにだけ聞こえる由井くんの声。それが、甘く優しく鼓膜を震わせる。
「わたしも、由井くんが好きだよ……」
わたしの告白に、由井くんが泣きそうに微笑む。
わたしに笑顔を残したまま、由井くんの身体は崩れるように輪郭を失い……。それから、空気中に溶けて消えてしまった。