振り向いて二歩近づくと、イケメンユーレイが、ふわっと、そのまま溶けて消えちゃうんじゃないかと思うくらい嬉しそうに笑う。
「やっと、衣奈ちゃんがまともにおれの声を聞いてくれた」
心臓がドクンと鳴って、彼の笑顔に惹きつけられて動けなくなる。
彼がわたしのほうに手を伸ばしてきて。その瞬間、何十キロもの錘がのしかかったみたいに、急に肩が重くなった。
ついでに、ぐらりと、なんだか立ちくらみまでする。
なんかヘンかも。でも、こんなところで倒れたら……。
手で額を押さえようとして、ふと、自分がイケメンユーレイの両腕に包まれているとこに気付く。
もしかして、急に肩が重たくなったのは彼のせい……?
びっくりして恐々視線をあげると、色白のイケメンユーレイが、十センチにも満たないくらいの至近距離で微笑みかけてきた。その笑みをどう言い表したらいいだろう。
艶のある黒い髪、奥二重の切れ長目。弓状にしならせた形のよい薄い唇。
近くで見た彼はなんというか。妖しいくらいに美しかった。あんまり綺麗で、ゾクリとするほどだ。
目の前の彼を見つめたまま動けずにいると、彼の両腕がわたしをぎゅーっと締めつけてくる。
と言っても、彼の腕の感覚があるわけではなく、見えない縄で縛られてるみたいな感覚だけがあるのだ。



