由井くんが、消えた。
心臓がバクバクとなって、その事実を受け入れるのにしばらく時間がかかった。
さっきまでたしかにここにいたはずなのに。由井くんの身体が、わたしの目の前で煙のように溶けてしまった。
『衣奈ちゃ……、た……、けて――』
最後に聞こえた由井くんの掠れた声が、縋りつくような苦しそうなまなざしが……。
残像になって、目の前でチカチカとする。
どうしよう……。どうしたらいいんだろう……。
あんなに苦しそうだったのに。助けてって、わたしに訴えかけていたのに……。
どこに行ってしまったんだろう。
それとも、今まで視えていたことが全てわたしの幻覚や妄想だった――?
パニックになった頭がそんなことを考え始め、ブンッと大きく首を振る。