どうして彼がわたしのことを知っているのかはわからないけど、関わっちゃダメだ。
青南学院のイケメンのユーレイ(たぶん)なんて見えていないフリをして、2両目の乗り場のほうへと足を向ける。
そんなわたしの背中に、「待ってよ、衣奈ちゃん」というイケメンユーレイの悲痛な声が届いた。
「おれ、昨日からずっと、ここを動けないんだ。でも、衣奈ちゃんのことしか覚えてなくて……。だからお願い。助けてよ」
「助けて」という、切羽詰まったような彼の叫びに、ダメだと思うのにわたしの足が止まる。
誰だかわからないけど、助けを求めてるのにムシするのはひどいよね……。
わたしにしか視えていなくて、なぜかわたしのことしか覚えていないという彼を見捨てたら……。
何人もの通行人が彼の身体をすり抜けていっていたのを思い出して、胸がチクリとなる。
得体のしれないユーレイなんてほっとけばいいのに。それがユーレイであっても、助けを求められたらほっとけないような気持ちになるなんて。
わたしはなんて、お人好しでおせっかいなんだろう……。



