それ以降、よく電車で彼女を見かけるようになった。
もしかしたら前から同じ電車を利用していたのかもしれないけど、助けてもらったあの日から、彼女はおれの中で特別になった。
でも、彼女のほうは、たまに電車で乗り合わせるおれのことに気付いていないみたいだった。
助けてもらったときに、ろくにお礼も言えなかったし。見た目がダサくて地味な自分が、彼女の視界に入れてもらえるはずもない。
だからいつも、少し離れたところから彼女のことをそっと見ていた。
中条たちの嫌がらせは続いていたけれど、たまに電車で見かける彼女の存在が、おれの心を救ってくれていた。
彼女の名前は、偶然電車に乗り合わせたときに彼女と一緒にいた男が「衣奈」と呼んでいるのを聞いて、初めて知った。
その男は、背が高くて、日に焼けた肌が健康的で、明るい笑顔の爽やか高校生だった。
彼氏なのかな……。
面識のないおれなんかを助けてくれた衣奈ちゃんは優しいし、かわいい。
彼氏がいたっておかしくない。
だけどそう思うと、胸の中が苦しくてぐちゃぐちゃに掻き乱された。



