優秀で容姿の整った兄と違って、おれは地味で消極的で口下手で、小さな頃からどちらかと言うといじめられ体質だった。

 小学校低学年の頃は、同じ学校に在籍していたちょっと過保護気味な兄に守られてイジメにあうことはなかったけど、ひとたび兄が卒業すると、同級生の主に男子から、物を隠されたり、仲間はずれにされたり……、そういう嫌がらせを受けることが多くなった。

 背が高くて成績やスポーツも万能だった兄と違って、おれは骨が細くて色白で、男にしては頼りない見た目だったし。他の子どもに強く言われたら、怖くていつも逆らえなかった。

 だから、受験して青南学院の中等部に入ってからも、そのままエスカレーター式で高等部に進学してからも、クラスの中心人物的な生徒にはなるべく近付かないように気を付けていた。

 友達はあまりいなかったけど、カースト上位の生徒に目を付けられないように気を付けていれば、それなりに平和な学校生活を送ることができる。

 伸ばした前髪で顔を隠して、必要なこと以外はしゃべらず、クラスメートたちから無害だと思われるように心がけて。

 そうやって、地味に、静かに、海の底で呼吸をするように過ごしてきたのに……。