「由井くん……?」
「衣奈ちゃん、このあと、病院に寄ってもいい?」
「え?」
「おれ、今日、衣奈ちゃんとここに来てすごく楽しかった。だから、早く自分のことちゃんと思い出して、元の身体に戻りたい。衣奈ちゃんとの次のデートは、こんな誰にも見えない身体じゃなくて、ほかの人からも衣奈ちゃんデートしてるのがちゃんとわかってもらえるようにしたい。衣奈ちゃん、おれが元に戻ったら、また一緒に水族館デートしてくれる?」
わたしにしか聞こえない、由井くんの声。
その声に胸が揺さぶられて、ドクドクと心音が速くなる。
「おれ、衣奈ちゃんのことだけ覚えてた理由が今、なんとなくわかったかも。おれが元の身体に戻るために、衣奈ちゃんが必要だったんだと思う」
わずかに首をかしげながら、由井くんが微笑む。
ペンギンの飛ぶ上空から差してくるまぶしい光が、由井くんの半透明の笑顔をゆらめかせる。
由井くんの笑顔がとても、綺麗だった。綺麗で、綺麗すぎて、息苦しいほどにぎゅっと、胸がせつなくなった。



